手鏡
一人で、失恋した。
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最近落ち着いてきたと思っていた私のココロは
どうも、また活発に動き始めていた。
彼と連絡を取ることで自分の機嫌は落ち着くし、
彼と連絡を取ることで自分の機嫌は悪くなる。
正直どうすればいいかわからなかった。
そして一昨日。
日曜日の夜。
土日は、彼からの何かしらの連絡を待ってしまったり、平日よりも返事が来るのが早いのでは、と期待してしまうから苦手だった。
その分虚しくなるだけだった。
そう、一昨日もまさしくそんな気分だったのだ。
わたしはこの気持ちをどうしようか、と悶々と考えていた。
気持ちを素直にぶつけてしまおうかとも何度も考えた。
次の恋に進めないのはやっぱり私だけなんだね、と言っても仕方のないようなことばかりポロリと言いそうになる。
いろんな感情をぐっ、とこらえて送った一文は、今日の夜何してる?だった。
その日私はSNSで、餃子のことを呟いていたのだが、僕も食べたい、と返事してきたので、餃子パーティーしよ、と言った。
彼は、どこで?笑、と言った。
こういう時だけ少し返事が早いのもずるい、
ホットプレートあるから私の家がいいけど、というと、僕の家ならいいよ、と言った。
こういう感じが、すごく嫌なのだ。
私だけ必死になって彼との時間を作って、彼と会うために彼の言うことを私だけが従順と聞く感じが。
それは如何にして、と聞くと、職場も近いし僕の家に泊まればいいやん、と思って、と言った。
たしかに彼の家からだったら、彼に合わせて出てもいつもより1時間は遅く起きることができる。
だけど、そうじゃない。
最終的にはそうなるかもしれないけど、お互いが譲り合いたいのだ。
いつも私ばかりのこのこと彼の家に1時間かけて泊まりに行くのは、嫌なのだ。惨めなのだ。
少し前、彼と最後に会った後、セフレみたいだね、と言った私。
私だけ都合のいいセフレになっていた。
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結局、今日は気分じゃない、とまで言われ、結局無くなった。
私は色んなことが悔しくて、また一人で泣いた。
彼が出て行ってもう二ヶ月が経つのに、最近また一人で泣く夜が増えた。
私は決意した。
いつまでも私の家にある、彼の最後の荷物を取りに来ようとしない。彼の家に泊まりに行く私に持って行かせようとする。
その荷物を持って、彼の家へ向かった。
夕ご飯も済ませ、風呂も入り、化粧もして、慌てて家を出た。
21時過ぎだった。
次の日は月曜。仕事が始まる。
荷物だけ渡して、これが最後、と伝えて、すぐに家に帰ってくるつもりだった。
だから、作った弁当は家に置いていった。
でも、化粧道具は一式カバンに入っていたし、服装は職場に来ていけるような服装だった。
アポも取らず、走って電車に乗り、一息ついた。
そしてSNSを開いた。
飲み会に彼が参加していた。
一気に色んなものが冷めてしまった。
そう言うことか、と思った。
餃子のはなしをしているとき、行く行かないの最中、彼は急に、やめとこう気分じゃない、と言った。
しばらくして、軽音の先輩たちが飲みに行っているのをSNSで見た。
まさかな、とは思っていた。
やっぱり女の勘というものはすごい。
今日中に帰るとしても、1時間くらいは会って話が出来るように急いで出てきた私はすごく虚しかった。
何度、私は一人で虚しくならなければならないのだろう。
もうこんな気持ちになりたくない。
彼の荷物を捨ててやりたかった。
だが電車には乗ってしまった。
終電を調べた。
幸か不幸か、日をまたいでも電車はあった。
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彼の家の近くのマクドナルドで時間を潰した。
何度もSNSを確認し、飲み会はまだ続いているか見た。
とんだメンヘラだな、と思った。
1時間以上時間を潰して、23時も過ぎた頃、明日から仕事だからそろそろ解散しているだろうと思い、彼の家の前で待ち伏せすることにした。
彼の家の前までゆっくり向かい、マンションが見えるところまで来たとき、前から見覚えのありすぎる男性が歩いてきた。
グッドタイミングと言わざるを得ない。
彼の名前を呼んだ。
彼は気づかなかった。
走り寄って、もう一度呼んだ。
彼は驚いた顔をして、振り返った。
これ、これだけ持ってきた、帰る、と言うと、
もう泊まっていきや、と言ってきた。
押し問答をして、結局彼の家へ引っ張られていった。
ほら、化粧道具一式持ってきてよかった。
また、虚しくなった。
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彼が寝てから、また携帯を盗み見た。
前言っていた、気になるピッチはこの女だろう。
全く恋愛対象として見られていない感じがして、少し心地よかった。でも、私と離れる前から連絡を取っているらしい女は何人もいたし、その女もそうだった。
引っ越して1週間そこらでその女とはあっていた。
おそらく他の女とも散々のみに行ったりしているのだろう。
数時間電話したり、本当に意味のない返事をしたり。
そっか、そうだよな、と思った。
やっぱり虚しかった。
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次の日家をでる前、彼の家の机に手鏡を置いた。
今考えてもするべきではなかった。
また会う口実を作ったのだが、その気持ちとは裏腹に、離れられなくなったのがネックだった。
私は何をしているんだ。
もう、本当によくわからなかった。