ヒトツキ。

引っ越してから1ヶ月が経っていた。

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私は彼と連絡を頻繁に取っていた。

そして遂に彼の家に行った。二度もだ。

一度目は、私が彼に会いたくなった。

二度目は彼が私を誘った。

ただのセフレになりたくなくて、気休めとはわかりながら、彼に 会いたいからきて欲しい と言葉にさせた。

本当に、言わせたも同然の為、彼の本心ではないだろう。

しかし、その時の私には必要だった。

私があなたに会いたいから行くんじゃないよ、と伝えたつもりだった。

駅から2分くらいのマンションだから、道は覚えてたけど、駅まで迎えに来てもらった。

会いに来て、と言われて、黙って家まで行くのは、本当に都合のいい出張セフレの様に感じたからだ。

二度目に至っては二泊もした。

彼はその二日の間何度も、私がまたこの街に来ることを匂わせる発言をした。

また来る時に大変やから駅からの道覚えておいて、とか

合鍵が1つも無いから、俺が仕事の間に作ってもっとけばいいやん、とか

誕生日だったから、給料が入ったらまた回転寿司でも食べに行こう、とか。

初めて彼の街に行った時は正直ワクワクしていた。

今後も彼との関係が約束された様な気がして。

でも、二回目彼の街に行った時は、これで最後だとなんとなく決めていた。

もしかしたら意志の弱い私だからまた来てしまうのかもしれないけど、彼の前ではそういった発言は出来るだけしたくなかった。

彼はバカ正直だから、女の影がある事を隠せない。

最初それが見えたのは 人にかけた言葉ですごく引かれた と言うので、純粋に 誰に と聞くと、少し黙ってから  一緒に飲みに行った子 と答えた。

なにも聞かなかった。

私には散々 あのツイートは誰のこと だとか 他の人とエッチしたん とか不躾な質問はしてくる癖に、自分は女との関係が見え隠れするとばつが悪そうにする。

私はそんな彼を見て、これで最後にしよう、と思った。

これまで何度も彼に裏切られてきて、何度も信じてきて、でもまた裏切られて。

これはいつまで続くんだろう。

果てしないこの繰り返しに今後私は耐えられるのだろうか。

彼の中でかけがえのない一人になる事はあるのだろうか。

残念ながら私だって一人の女だし、恋愛経験もそこまで豊富じゃないから、そんなことに耐えられない。

私と彼にとって、今というのは一緒に暮らしていた頃よりもナイーブなはずだ。

もう壊れてしまった関係、無くなってしまった関係、ただの友人よりも、もっともっとバランスの悪い関係だ。

彼はそんな大事な時期だということをわかっているのだろうか。

お互いの一言で、私たちのこれまでの3年間が本当に見てはいけない過去になるか良い経験だったのかに変わってしまうというのに。

私が繊細になりすぎているのかもしれない。

だが、彼の行動発言を見て、今までよりもはっきりと、これからの彼との未来が見えなくなった。

こういった異性関係の事だけでは無い。

何事にも自分のしたいことを最優先してしまう彼にも嫌気がさしていた。

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今までずっと一緒に居た事に後悔はしていない。

大好きだった。

お互い少しは成長できた。

なんでも話せた。

なんでも出来た。

お互い、お互いにすごく甘かった。

何度も壁を乗り越えてきた。

一生一緒だと信じて疑わなかった。

安心、そのものだった。

いい思い出が多かった。

わるい思い出の方が断然多かった。

でも、大好きだった。

本当に本当に大好きだった。

恋人だけど親友だった。

出会えて良かった、と思える人だった。

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二日目、これで最後、と思っていた私にとって、彼の家を出ることが本当に本当に名残惜しかった。

そう決めたきっかけも、思い出される思い出もわるいことばっかりなのに、その時私の中は彼を大好きだった気持ちでいっぱいだった。

しばらくして、彼が こんなんじゃ離れた意味ない と言った。

そんな事は言われなくてもわかっていた。

それに、彼と違って、少なくとも私はこれで終わりと心づもりしていた。

しばらくして、私は立ち上がった。

彼はそんな私の服を引いた。

帰る、あなたもそう言うことだし、という私に彼は、今日は遅いからいいじゃん、と言った。

その二日で唯一彼の名残惜しさを見た気がした。

なくもんかと、思ったのに、ボロボロ泣いてしまった。

寝てる間に見たスマホには女の影がいくつもあったし、私と違って本当に他の恋人を探している事に、心底悲しく思ってしまった。

でも、もう一緒にいるのは疲れてしまった。

泣く私を見て彼は、この1年間泣かせてばかりだね、と言った。

彼の中では一年の話だったのだろう。

一緒に暮らした一年が、私たちの別れた原因で、思い出なのだろう。

私にとってはこの3年間全てが忘れられない思い出だった。

3年間ずっと裏切られてきた。でもその分愛をもらった、はずだ。

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いま先ほど、桑原とはしことご飯に行ってきた。

私が、彼に対してもう諦めた、と言うと心底喜んでくれたようだった。

やはり、こういう人だったんだなあとおもう。

どれだけ成長しても、変わってないところはまったく変わらないし、軽音部からしたら特に、彼はそういう人なのだ。

あんなに大好きで、離れたく無いと願った人も、他の人からしたら全くそんな対象ではない。当たり前のことだけれど、やっぱり改めて感じた。

今その帰り道なのだが、かれに会いたい気持ちが高まる。

この段落から前は、行き道の電車で書いていた。

この数時間で、人の惚気話を少し挟んで、お酒が入ったくらいでこんなにも気持ちは揺れるものなのだろうか。

明日の朝になればまた気持ちは変わっているのだろうか。

それともBGMのwacciがそんな気持ちにさせているのだろうか。

なんにせよ、この決意は揺れやすい事を知った。

なんともむずかしいものだ。

それくらい、私は彼が好きだった。

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彼を世界で一番愛してしまう前に戻ってしまいたかった。

散髪

髪を約30センチ切った。

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彼が引越していってから、3週間が経った。

この1週間、私の心中は随分穏やかだった。

理由は、彼と連絡を取っていたからだろう。

家を片付けに来る日を土曜に決め、そこから何かしらずっと連絡を取っていた。

彼は食中毒で弱っていた。

それまではラインでも冷たい態度しか取れなかったが、徐々に慣れ、少し柔らかく返事できるようになっていた。

そして昨日。

彼は我が家にやってきた。

主な目的は、彼の残した荷物やゴミを片付けることだった。

しかし、それは家に来て早々、結局私がゴミに出す、ということで落ち着いた。

腹立たしかった。

これはいらん、と言い捨てた彼。

ラインの時点でも薄々勘付いていたが、彼は、私にさせる気満々だった。

それってどうなの?

もう彼の家では無い私の家に私物を放置し、その私物はいらないからゴミの日に捨てておいてくれ、と言う。

家に来てまでそのようなことを言うので呆れてしまった。

それに、今思い返せばプラスチックの衣装ケースだけが残っているのでは無い。

服のゴミも大量にある。

いま住んでる地域はどうかわからないが、私の実家がある地域では、燃えるゴミの日に服を出していたら突き返される。

あの三袋パンパンに詰まった服を私に小出しに捨ててくれと言うのだろうか。

本当に人任せな男だ。

本当に本当に呆れた。

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ゴミ問題が一応解決してから、彼は我が家で昼食を済ませた。

私が姉とした作り置きを見て、この中に食べていいおかず無いの?と聞いてくる始末。

家に来たのは14時半頃だったと思う。

我が家に来て早々、コーヒーを出せ、と言ってくるし、遊びに来てもらったわけでは無い。

できれば、家に長居してもらいたくなかった。

くつろいで欲しくなかった。

いつまでも自分の家だと思って欲しくなかった。

私の納豆と白米を食べて、彼はそれを片付けることもなく、ソファへ寝転んだ。

IKEAで一緒に買ったクマの大きなぬいぐるみ、ゲンこと源二郎を抱き抱えた。

友人の家に遊びに来たかのように寛ぎ、図々しく、私への態度も勝手に出ていった元恋人とは思えなかった。

いつまでもぐちぐち言うなと言われてしまいそうだが、私にとっては一から十まで大問題だった。

私がソファの前に腰掛けており、彼はソファに座り、私を背後から包み込むように座って抱きしめた。

何も言わなかった。

正直、何も感じなかった。

嫌な感じはした。

それは、この後おそらくセックスへ繋がるだろうと感じたからだ。

彼の中で私は元彼女という位置付けなのだろうが、私の中で彼はそんな単純なものではなかった。

案の定、行為に至った。

何も感じなかった。

彼は行為が始まってすぐ、こういうこと、した?と聞いてきた。

するわけがない、そんな尻軽に見られては困る。

だが、なんとなく、ひみつ。と答えた。

彼は、したんだ、と言った。

彼に、したの?と聞くと、

俺はしてない、と答えた。

嘘だ、と言うと、本当に、と答えた。

正直、本当に信用出来なかった。

今までそうやって裏切られてきたのだ。

今思えば、信用する、しないというのはもう関係の無いことだった。

そのあと、行為中に彼は一度私を可愛い、と言った。

もう別れており、彼を落胆させる心配をする必要はないのに、私はずっと演技をしていた。

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行為が終わり、彼はしつこく、他の男と寝たのか聞いてきた。

私はずっと、ひみつ、と答えた。

したか、してないかだけ教えて。と彼は言ったが、ひみつ。と返した。

必死に聞いてくる彼に、少しざまあみろと思っていた。

でも、今までこうやってしつこく聞いてくる時は、自分に非があった時だった。

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そのあと二人とも動画を見ながらうたた寝をしていた。

彼を私に、好きなん?と聞いてきた。

冗談っぽい言い方だったが、毎度何も答えなかった。

気持ちがわからないのが実際のところだった。

彼が帰ってからもしばらく何も感じなかった。

しかし、だいぶ時間が経ってしまってから、彼のことを少し恋しく思った。

何度も、もう好きだから隠さず行動するね、と伝えようか迷った。

しかし、卒ライの時にちぃちゃんに言われた、それは情。という言葉を思い返して踏みとどまった。

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彼と暮らしている時全然見つからなかったこたつのコードが今朝見つかった。

もう春だ。

夕飯

派遣1日目。

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あれから、全く連絡を取っていない。

このブログはいつのまにか彼への気持ちの変化を綴るものになっている。

別に、それだけにするつもりは無いのだが、私の最近の日常はこれしか無いのだ。

それに、後から見返した時、当時の私の気持ち全てを知ることが出来るのは、エモくていい。

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数日前、ふと彼の携帯に出会い系アプリが入っていた事を思い出した。

去年の今頃、私は桑原に彼が飲みの場で、ワンチャン出来るなら狙っていく、といった事を言っていたと聞いた。

計り知れないショックだった。

今まで散々私に異性関係についてぐちぐち言っておいて、自分はそんな事を思っていたのか、と。

それに飲みの場でそんな事を言うということはそれが本心ではないか。

その日帰宅後、彼に問うた。

さも迷惑そうな顔で聞いていた彼は、その数日後、浮気を告白した。

その後、また別の友人から彼が出会い系アプリをしていると聞いた。

それも加えてショックだった。

後から問うと、いとこにやれ、と言われたからだそうだ。信用なるか。

当時、彼の異性への考え方がこうも私に言っていた事と違うのかと衝撃だった。

今まで約3年間裏切りに裏切られて来たが、私は彼のことを手放すことが出来なかった。

そのザマが今である。

彼に捨てられた。

こんな言い方は語弊があるかも知れないが、私個人としてはこれがふさわしかった。

そしてこの年末あたりだったか、彼の携帯を見たとき、出会い系アプリをまた発見した。

ショックだった。

不思議と去年よりもショックはそこまで大きくなかった。おそらく、彼が私との生活を終わらせたいと思っていると感じていたからだろう。

そのことは彼には何も言わなかった。

そして数日前そのことを思い出したのだ。

私はすぐさま3つの出会い系アプリをインストールし、彼を探し始めた。

すぐに見つかった。

もともと、全く知らない女として彼に近づき、弄ぶつもりでいた。

実際、彼のアカウントを見つけたとき少し高揚したのがわかった。

すぐさまメッセージを送った。

少し特別なハートも送った。

それから何度もアプリを確認した。

そして今日、彼からの特別なハートが返ってきた。

なんだか複雑な気持ちだった。

メッセージは返ってこなかった。

しつこく送ってもあれなので、少し時間は置くことにする。

本当に気持ちがざわついた。

いつもながら、自分の気持ちがわからなかった。

ここ数日全く連絡を取っていなかったのに、久々のコンタクトがこれは、いかがなものだろう。

とはいえ彼はこのアカウントが私とは気づいていない。滑稽である。

もう少し様子を見ることにする。

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今日、初の派遣から帰ってきて、夕飯を作り始めた。

弁当も一緒に作った。

今日は研修で、終わる時間も早く、帰ったのは五時半頃だったと思う。

ゆっくりご飯を用意できた。

今まで日産で働いていたときは帰りが八時半以降だった為、下の住民がうるさいのもあって料理などする気が起きなかった。

それに風呂もだ。

しかしこれだけ時間に余裕があれば、夕飯を食べたあとゆっくりしてから風呂にも入れる。

気持ちの持ちようが違う。やっぱりやめて正解だった。

まあこの話は置いといて。

夕飯をつくっている時、BGMにマイヘアを聞いていた。時には歌いながらつくっていた。

しばらくして、曲はなんだったか覚えていないが、歌詞を聞いて泣いてしまった。

久しぶりに彼のことを思い出しながら泣いた。

気持ちが残っているかはわからないが、彼との生活に未練があるのは明らかだった。

自分で自分がわからないのはもう日常茶飯事だが、いつになったらこの気持ちが落ち着いてくれるのかがわからなくてすごく不安になった。

そのあと夕飯を食べてYouTubeを見ていると、外国人の元カップルが向き合って話し合うという関連動画が出てきた。

前はそのシリーズで、結婚した二人が結婚の理由を話し合っていて、すごく感動したのを覚えている。

今回出てきた動画の議題は、どうして浮気したの?だった。

彼氏が交際中、何度も浮気していたみたいだ。

それを彼女は携帯を見て知った。

なんとも考えさせられる内容だった。

何度も何度も私の心に刺さるセリフを二人はつぶやいていた。

そして最後に、彼氏が、もう僕たちは前に進み始めている。お互い、本当にお別れした事を認めなければならない。と言った。

もう私の心はそのセリフに握りつぶされてしまっていた。

そうだ、もう、別れたんだ。わたしたち。

結婚

結婚式の二次会にお呼ばれした。

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昨日、一年ぶりにゼミの集まりがあった。

みんなこの1年間で、本当におとなになっていた。

いつまでも子供なのは私だけだった。

お酒を久しぶりにたくさん飲んだ。

いつもよりは多目だった。

それだけだった。

少しいい気分にもなった。

でも、それだけだった。

にも関わらず、彼にラインを送ってしまった。

酔ってるような口ぶりのラインを送った。

かまってちゃんもいいところだ。

しばらくして、既読無視になった。

嫌悪感がすごかった。

また性懲りも無くこんなことして何になる。

もしかしたら彼に少しの優越感でさえ与えてしまっているかもしれない。

飲み会で散々周りに彼の愚痴をこぼしていたのに蓋を開けてみればこの有様で。

好きがバレバレじゃないか。

世界で一番嫌い、なんても言っていた。

彼は、つらい、とだけ返して来た。

返事がこなくなって、自己嫌悪に陥って、お酒と食事による十分すぎる満腹感はどんどん嘔吐感へと変わっていった。

私はいつまでもおこちゃまだ。

変わらない。

みんな結婚も見据えた話をしているのに、私だけ時が止まっているようだった。

何も進んでなくて、むしろ退化しているように感じた。

もうこかのまで来たら赤ん坊のように泣いて泣いて迷惑かけまくってしまいたかった。

いっちょまえなプライドがそれを邪魔した。

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朝、ラインが返ってきていた。

ツイッターで、吐く、と呟いたのを見たのか、

吐いたの?

とだけ来ていた。

少し高揚した。

そのあとインスタを見ると、例の元カノと別のカップルと宅飲みをしていた。

ストーリーに彼の姿が映って、なんとも言えない気持ちになった。

一番最初に別れた時、その元カノとは速攻セックスをしていたのを知っているし、彼女といる事は私にとってすごく不快だった。

何度も見返してしまった。

1週間ぶりの動く彼。

特に久しぶりとも思わないけれど、あの引越しの日からやっと1週間なのか、と言う気持ちだった。

インスタはそのあとすぐに閉じたし、

ラインは未読のままトークを非表示にした。

ついでに彼のラインアカウントも非表示にした。

これから残った荷物を取りに来るときに連絡はしないといけないし、ブロックはしなかった。

それに、消すほどでもないと思ってトークも削除しなかった。

そう、言い訳ばかりしている。

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今日はバイト時代お世話になった人の結婚式の二次会があった。

と、同時に軽音のOB・OGライブがあった。

正直ライブにすごく行きたかった。

引越し以来初めて会う彼に、昔別れたときのように無理矢理キスをされて気持ちを確かめ合う事ができるかもしれない。

なんて、思ってしまっていた。

二次会の途中もずっと時計を確認していた。

行っても何も変わらないだろうことなんて分かっていた。

綺麗なドレスを着て、幸せにそうに笑う先輩は間違いなく、今日、世界で一番綺麗だった。

思わず泣いてしまった。

と、同時に自分の結婚についても考えていた。

私は彼と結婚すると思っていたし、こうやって結婚について考える時も未だに彼が横に並んで笑いかけてくれている情景を思い描く。

もう結婚なんてそこらへんに落ちているような年齢になっていることは明らかだった。

だが自分は誰と結婚するかまったくわからない状況にいた。

つい二ヶ月前までは彼が横にいるとしんじてやまなかったのに、今はそれが叶わない。

私は誰と結婚するんだろう。

私は誰と付き合うんだろう。

私は誰に恋をするのだろう。

まったく見当もつかない。

帰り道、理想の人を聞かれ、

優しくて、笑いの波長が合って、私のことを甘やかしてくれる人

と答えた。

考えているのは彼だった。

彼の好きなところを挙げていた。

彼のことばかり考えていた。

でも、もう、しかたないのかもしれないと思い始めた。

本当に別れてまだ1週間しか経っていない。

そんなにすぐに忘れられるような恋愛はしていなかった証拠だ。

三年も一緒に居たんだ。

たくさん笑ったし、たくさん泣いたし、たくさん怒った。

私たち二人は間違いなく恋をしていた。

一生を共にすることも真剣に考えた。

別れは突然だった。

忘れられなくて普通なのかもしれない。

情があって当たり前なのかもしれない。

こう考えることができたのは、こうやって文字に自分の感情を起こしているからだ。

きっと全ていい方に繋がっている。

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彼が出て行ってから、彼の吸っていたタバコを一箱買った。

1日何本も吸うわけじゃないが、

いつのまにかタバコを吸うのは上手くなっていた。

ぶりの照り焼き

何もない日を過ごした。

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今日はまた大阪にいた。

昨日急遽面接が決まった。

ここ一週間、というよりここ数日で大阪に何度行っただろうか。

スーツを着て、パンプスを履いて、人前で足を閉じて座る。

当たり前のことだが、環境が違うだけでこんなにも新鮮に感じるのだろうか。

今日の面接は緑地公園であった。

初めて行く場所だった。

感想はまたしても、イマイチだ。

帰り道、窓の外の景色を見ながら、もしうまくいけばここで働くのか、と思った。

約一時間半かけて通勤。しかも満員電車。

そのうち近くに引っ越すとしても最初の数か月は恐らくその状態が続く。

私にできるのだろうか。

まあ内定をもらえればの話だが…。

どちらにせよ今私が受けているのはすべて大阪である。

彼がまだこの家にいたときは、引っ越しも見据えて彼の職場との時間も一緒に調べていたものだ。

一人暮らしを宣言されてからもしばらくはどの職場も時間を調べていたし、近くの職場を選んでいた気がする。

もし別れて暮らすことになっても、近ければもしかしたらどこかでばったり会うかもしれないし、いつかよりを戻したら近い方がいいに決まっている。

なんて馬鹿げた未練がましいことを本気で考えていたものだ。

窓の外を見ながら、ふとそんなことを思い出していた。

緑地公園から堺筋本町までの時間は約30分だった。

一人で落胆した。

前までこれが自分の中で会社を決める重要な点だったはずだ。

いつの間にかそれも忘れて面接を受けるようになっていた。

もう彼との生活はあきらめたのか、

大阪だったらどこでも繋がっていると思ったのか、

それは私にもわからなかった。

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そういえば、数日前に彼から連絡があった。

内容は、就活の進捗状況についてだった。

通知を見た瞬間、心が跳ねた。

本当に跳ねたのだ。

彼が出て行ってからというものの、iPhoneの通知を前以上に気にするようになった。

彼からのラインを性懲りなく待っていた。

そんな時、待望のラインが来たのだ。

その気持ちとは裏腹に、返事はそっけなく返した。

ラインが終わりそうになると、

歯ブラシとか捨てていいの

とまるで彼を突き放すかのような話題を出して返事が少しでも来るように仕向けていた。

実際返事は来たが、その後もそっけない返事しかできなかった。

その甲斐もあってか、やり取りは5往復で終わったのだった。

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面接から帰り、ずっとNetflixを見ていた。

夕飯にぶりの照り焼きを初めて作った。

すこし辛かった。私は甘目の味付けが好きらしい。

彼も何度か作ってくれた。

おいしい、と思っていた。

彼の料理はいつもおいしかった。

だが、それ以外に何も感じなかった。

同棲する前は彼の手料理はたまにしか食べられなかった。

その時はもっと、おいしい、以外の感想が口をついて出たものだ。

同棲したての頃も、もっと感想を伝えていたはずだ。

いつの間にか、おいしい、とさえも言わなくなっていたかもしれない。

彼の料理は当たり前になってしまっていた。

彼自身、料理に文句をつけられるのは嫌がっていたから、それはそれで別によかったのかもしれない。

しかし、彼の週に2日しかない休日を作り置きのために時間を割いてもらっていたのだから、私はもっと何か言うべきだった。

せめて、いただきます、ごちそうさま、おいしかった、と伝えるべきだったのだ。

そして時には、いつもありがとう、と。

なぜこんな簡単なこともできなかったのだろう。

彼は私の召使ではなかった。

彼が言っていた 俺のものを大切にしてくれない というのは、単に借りている物だけではなく、丹精込めて作った料理も含まれていたのかもしれない。

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ソファでゆっくりしているとき、ふと顔をあげると時計が目に入った。

20時半だった。

今日は21時からカメラを止めるな!の放送がある。

映画館では見ることができなかったため、少しわくわくしていた。

その時、彼と一緒に見たかったなあ、と考えてしまった。

有り余る時間のせいかもしれない。

しかし、一度考え出すと悶々と頭に残る。

実際映画を観ていても、やはりずっとそのことを考えてしまっていた。

そして、ついに、ラインを送ってしまった。

内容は、この間のラインがそっけない態度だったかもしれない、という内容だ。

どうでもいいし、こんな内容送ってしまったら彼にどうとらえられるかわからない。

増してや今日は花の金曜日だ。

いつものバルにいるか、軽音の先輩たちと飲んでいるか、女といるか。

どれかはわからないが、だれかといるのは確実だろう。

そんなところに元カノからの未練がましいラインが届く。

それを送ったのは22時10分だった。

送ってすぐ後悔した。

誰といるかもわからないし、内容が内容だった。

そっけなかったかも、という割に、ごめん、の一言も添えられていなかった。

まずいことをした、と思った。

すぐに送信を取り消そうかと思ったが、せめて通知には気付いてほしいと欲が出てしまった。

22時半になっても未読なら送信取り消しをしようと思った。

しかし、すぐに返事は返ってきた。

気にしていなかった、と。

そりゃあそうだ。

付き合っているときからこんな返事だったじゃないか。

恥ずかしかった。

ならいい、とだけ返した。

どこまでも上から目線だ。

そこから今まで返事はない。

既読にもならない。

送る前も悶々とはしていたが、送った後のほうがもっと気分が悪かった。

まだ飲んでいるならいい。

もし女といたら?

未練がましい元カノからのラインなんて本当にどうでもいいし、私の心は見え見えだろう。

なんて恥ずかしいことをしてしまったんだろう。

いつになったらこんな未練がましいことをやめられるのだろう。

男の穴は男で埋めるな、などと聞いたことがあるが、私には無理らしい。

早くほかの好きな人ができないといつまでたってもこんなことを続けてしまうような気がする。

きっと彼はそんなことないだろう。

引っ越し前日の一言でなんとなく、そんな気がした。

彼にとっては本当にあの日が私との別れだったのだ。

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彼よりも早く相手を見つけて、見せつけてやりたいと思った。

でも、彼にずっと愛されたい、とも思った。

私は、彼を愛していた。

彼を愛する私も愛していた。

面接

昨日は大阪に居た。

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転職のための面接、一社目。

面接自体は好感触だと感じた。

しかし持ち物に書かれていた電卓は使うことがなかった。

 予定しておりました試験は無くなりました。結果はメールでお伝えします。

と言われた。

どん底に落とされた気分だった。

何がいけなかったのだろう。

十人くらいの小さなベンチャー企業で、今日の面接官はお洒落な丸眼鏡をした三十代と見られる男性だった。

彼は代表取締役らしい。

代表取締役に面接をして頂けたのなら、もう結果は決まっているも同然のはずだ。

早く答えを出して欲しい。

あそこで働きたい、という強い願いはある。

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その後、一度家に帰り、また梅田へと出た。

たっちょんと会っていた。

二人の会話はインスタグラムのストーリーで結婚式の様子を載せるみやこさんの話で持ちきりだった。

噂によると新郎さんは年収2000万超えの超大企業にお勤めらしい。顔もハンサムで、すごく優しそうな笑顔が特徴である。

みやこさんは美人で気さくでだれにも媚びず自分の芯を貫く素晴らしい女性である。

グアムでの挙式はさぞ素晴らしかったであろう。

二人の晴れ姿を見ながらたっちょんと何度も羨ましいと言った。

二人は見るからにお似合いだった。

私はみやこさんのことしか知らないし、勤務期間がすごくかぶっていたというわけでもない。

しかし二人はお似合いだとわかったし、輝かしい二人が本当に羨ましかった。

.

私も彼と結婚すると思っていた。

実際周りにもそう伝えていた。

しかし実際は違った。

結婚はゴールじゃない。

それはわかっているのだが、二人が永遠に共にいることを誓い、支え合う、ということが羨ましいのだ。

私は彼と永遠に共にいる気がしたのだ。

彼も実際そう感じていた事だろう。

一時は。

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彼が引っ越してから5日目になる。

今は事情があって実家で寝ている。

それもあってか心境は穏やかである。

鍵を無くしたときに連絡が来たくらいしかコンタクトはとっていない。

何だかんだ彼がいなくても大丈夫そうなのだ。

本当に大丈夫そうなのだ。

彼のことを好きかと尋ねられると実際本当にわからないというのが答えである。

前も述べたかと思うが、私のことを特別だと思って欲しい気持ちはある。

しかし、よりを戻したいかと言われると本当にわからない。

それに、私がみっともなくSNSでこれ見よがしに発信している間、彼からの発信はない。

お子ちゃまは私だけである。

きっと彼は私がいない生活を十二分に満喫している事だろう。

そしてこれでよかったのだ、と実感している頃だろう。

もしかしたら他の女をもうすでに見つけている頃かもしれない。

恋愛に発信しなくてもセックスくらいは楽しんでいるかもしれない。

考えるだけ無駄である。そんなこと本人にしかわからないのだ。

私に出来ることはみっともない発信をやめるくらいだ。

わたしを見て、の主張は彼には届かない。

その後

そして、2日。

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あれからもう2日が経った。

昨日は大学の後輩主催のライブがあった。

あきひさんに誘われた。

OB,OGはアウェイだったが暇すぎたので行くことにした。

みんな輝いていて、ひろやとあきひさんと私たちは老けたという話をした。

厳密にいうと、私たちは老化をしたわけではない。

運動する量が極端に減ったかもしれないし、それが故に体力は落ちたかもしれないが、ステージで輝く後輩たちのような輝きを、まぶしい、と感じてしまうのはそれが原因故ではない。

私たちがいつの間にか 諦める ことを覚えてしまったからだろう。

当時の私たちは、夜更かしすることですら楽しかった。

チェーンがかかった柵を足を上げて越えることは近道するのに不可欠だった。

友人と夜の公園で安い缶ビール片手にこれからの将来に対する不安をつらつらと話すことも楽しかった。

それを自分自身のことを老けたと思い込み、諦め、ときめかなくなった。

そして、日常と呼ばれる変哲もない日々を選び、自分にとっての非日常を楽しむ彼らを、自分も昔はそうだった、などとあたかも自分が大人になったかのように言うのだ。

それはただ羨ましいだけだ。

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彼と暮らし始めて半年を経った頃から頻繁に考えるようになったのは、彼に対してドキドキしなくなった、ということである。

彼と交際し始めたころは会えるだけで胸が高鳴ったし、体が少しでも触れようなら意識して色んなことを考えてしまっていた。

それがもうなくなり、これは熟練夫婦のようだ、と感じるようになった。

それは安心である。素晴らしいことだ。

彼がいれば何だって乗り越えられる気がしたし、彼がいない生活を考えることもなかった。

何だって話せたし、なんだって見せることができた。

友人でだってそんな人はいない。

つらい時につらいと伝え、胸を借りて大泣きすることができた。

うれしいことがあれば一番に彼に伝えるために文字を打っていた。

だが、ふとそんなことを考え出すと不安ばかりが能内に残った。

このまま一緒にいて何が楽しいのだろう、と。

否、楽しい。楽しいのだが、これで良いのかと思うようになった。

長い年月を共に過ごすことができたからというのは理解できているのだが、何かもやもやしたものがずっと残っていた。

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あれから、彼がいなくなった部屋に帰っても何も思わなかった。

泣かなかった。

普通に眠れた。

そんな自分が少し寂しかった。

もっと、想像していたようにぽろぽろと泣いてほしかったし、夜一人で眠れずNetflixを漁っていてほしかった。

確かに眠れず、夜更かしもしたしNetflixを漁ってはいたが、期待した寂しさは感じられなかった。

いなくなったら、いなくなっただけだった。

用があって連絡しても2時間以上返信がなくてもやもやしたが、生活は普通にできた。

そもそも1人暮らしをするつもりだったのだから、原点に戻っただけであった。

なんだかあっけなかった。

彼への不平不満はいくらでも出る。でもそれはただ私が強がっているだけだ。

私を残し新生活へ一歩踏み出した彼に嫉妬しているだけだ。

残された私の将来が不安なだけだった。

なんだか普通にやっていけそうだ。

1か月もしたら生活に慣れていたのだろう、と思っていたが、そんなに時間はかからなさそうだった。

むしろ彼がいなくなってから、5分で終わるようなものだが料理をするようになったし、リビングで毎回寝るようになったが布団は毎度起きたらちゃんとたたんで別の部屋へ片づけるようになった。

面倒な皿洗いもする。

確かに今は世間一般でいうニートな為時間が有り余っている。

だからできていることも多いが、元から私は一人だとある程度できる人間だったと思いだした。

友人、家族、恋人など頼れる人には頼る、これが私の悪いところだった。

だから彼は私との生活に不満がたまっていったのだ。

一人の生活も楽しい。

好きな時間にご飯は食べられるし、量も調節できる。

好きな時間に眠ることができるし、Netflixを少し大きい音量で観ていても誰にもとがめられない。

なんと自由な生活なのだろう。

だが、こんなことはきっと私なんかより彼のほうが実感しているに違いない。

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昨日家の鍵をなくした。もう夜中だった。

どうしよう、と考え不安でいっぱいだった。

その気持ちをSNSで発信したが、それは主に彼に向けられたものだった。

Twitterなんて最近裏垢しかつぶやいていないのに、彼もフォローしている方のアカウントでつぶやいた。

なんと女々しい、女なんだろう。

案の定連絡が来た。

そのころには落ち着いていたし、電車なんて通っていない時間だった。

だが、満足だった。

そっけない態度で返事をした。

最低な態度だった。

正直、よりを戻したいかはわらなかったが、彼にとって特別な存在であり続けたい、ことが明確になった。

私はこういう女だった。

いつだって彼にとって私は気になる存在で、助けたい存在で、愛している存在でありたかった。

最早執着である。

連絡は私で止めた。

彼が私の文章を読んで、別にあなたの助けはいりません、と感じてくれればそれが最高た。

いつから私はこうなってしまったんだろう。

恐らく彼がカギをなくしたつぶやいても私は連絡はしないだろう。

そんな時でも彼から連絡がくるのを待つ。

わかっている。これが通用するのは彼が私を愛している期間だけだ。

もうすぐ終わる。

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明日、朝から面接が2つある。

一つは南森町、一つは守口。

彼の勤める堺筋本町は目と鼻の先である。